今回は、amazarashiが2017年末にリリースしたアルバム「地方都市のメメント・モリ」の中の「悲しみ一つも残さないで」を紹介します。amazarashiの故郷でもある、青森が舞台となっている曲です。
歌詞の中の「旅行く人」「別れ」「始発駅」「青森駅」といったフレーズから、青森を代表するご当地ソング「津軽海峡・冬景色」を彷彿とさせます。しかし、この歌が「津軽海峡・冬景色」と決定的に違うのは、拠点が青森にあり、そこから旅立つ人たちを見送っている事。
どこにも行かないで ずっとこの街で暮らして
歳を取って死ぬまで 笑って生きていたいよ君を惜しむ人がここにいる
歌の主人公は、近しい人達が都会へ旅発つ事を見送り続けているようです。地元に残り、旅だった人たちを気にかけるフレーズからは、名残惜しさや切なさが感じられます。
その一方で、
家族と別れ、友と離れ どこで暮らしても僕は僕で
そういう考えはやめておけ 生きた轍を君と呼べできればこっそり出てってくれ 悲しみ一つも残さないで
といった、旅立つ人に心残りを与えない、背中を押し切る力強い愛も感じられます。
地方において、残される者の「切なさ」と「矜持」という二面性の愛を歌い上げ、独自の世界を作り上げています。これは響きますね~。
アルバムタイトルを訳すと
「地方都市の死がある事を忘れるな」
という意味でしょうか。アルバムタイトルを凝縮したかの様な歌。
地域独特の感覚を歌い上げた傑作でもあり、他では出会えない唯一無二の怪作ですね。