辻村美月の「ナベちゃんの嫁」を読みました、もといオーディオブックで聴きました。
中編小説?と呼ぶようだけど。短めであっという間のお話。
主人公は20代女性。大学の合唱サークルの男友達「ナベちゃん」が結婚する事を知った女子たちの諸々を描きます。
ナベちゃんは、どちらかというと女子グループに属していて、お願いを何でも受けて入れてくれる「いいひと」。サークルメンバーとは特に恋愛はありませんでした。そのナベちゃんから「結婚するんだ、式に来てくれないか?」という一報がサークルメンバーに届きます。
サークルメンバーは、式に向けたお願い事をされるんだけど、その内容に女子たちが憤慨します。
- 結婚式では、余興としてオリジナルの歌詞で合唱してくれ
- 彼女の友達が少ないので、彼女の友達という事で参列してくれ
- 歌詞の内容も、彼女の友達視点でうまいこと頼む
- 僕は女子と連絡とりにくいので、メンズを通して連絡してくれ
的な色々と注文が付きます。
これを受けたサークルの女子達は「ないわー、あの嫁無いわー」「ナベちゃんもあんなの選ぶなんてないわー」と吠えまくり。
その後、この余興オファーだけじゃなく式への参列自体も無しになり、またその事を肴に女子会が開かれるのですが、そこでふと立ち返ります。
- 自分たちはナベちゃんを受け入れていたのか。
- 彼の好意をいいように扱い、男としてないがしろにしてきたのではないか。
- 彼は今、自分なりの幸せを見つけただけじゃないか。
- 彼の選択にケチをつける資格はないのではないか。
前半は、嫁さんの地雷臭が強調して描かれているので「ナベちゃんどうしちゃったんだ?」感が強いのですが、女子会を重ねる後半では、女子メンバーがナベちゃんを都合よく扱っていた面が見えてきて、視点がゆっくりと回転し、読者にもジワジワと気付かされる感じ。
「みんなの友達だよね」「私たちには、そういう事はないよね」と、仲間内の恋愛からは遠ざけておきながら、やっと念願かなって結ばれればその恋愛にケチをつけられる。
勝手にレッテルを貼って、そうじゃなかったからがっかりする。
ありそうな話、してしまいそうな話に、チクリとなる作品でした。
1つだけ納得できなかった点が。
それは結婚式の余興で合唱をする事自体を妙に渋るところ。
「ブランクがある」「みんなで集まって練習も無理」「オリジナル歌詞なんて不可能」と難癖をつけてやりたがりません。
何を言っているんだ!
大学のサークル活動は、結婚ラッシュ時に大学2年ぶりに活動のピークを向かえるんだぞ!20代後半まで視野に入れて、サークル活動は選びやがれ!
辻村美月は「本日は大安なり」しか読んだことなかったけど、
面白かったので連続でもう一作トライしています。
それはまた次回!