マンガ「おやすみプンプン」を読みました。
読み始めて最初は、なんてふざけた作品なんだと思いました。
浅野いにお先生が描く、書き込まれた世界観とかわいい登場人物たち、その中で主人公のプンプンだけが落書きのようなデザイン。明らかに異質なのに、全く説明せずに話が進んでいきます。いや、そもそも「プンプン」って名前は何なんだよ。
どこかで説明があるのかな?成長とともに人間の形に戻るのかな?
と思っていたけど、最後までその説明はありません。
その他にも、ページいっぱいの変顔や叫び声など、テンションの振れ幅が激しすぎる。最初の1,2巻は、どう読んでいいのかわかりませんでした。
しかしそのキャラデザインも、誇張された感情表現も、読者が主人公にシンクロできるような仕掛けだと気づきます。そして、感情移入すればするほど、作品全体に流れる、陰鬱で悶々とした雰囲気が身を裂くようになります。
とてもまぶしく爽やかな少年時代から、徐々にレールを外れ沈み込んでいくプンプンの人生。内気で照れ屋な少年が、歪んだ自意識の塊のようになっていく、その変遷がとても苦しいのです。
物語の中心である、田中愛子ちゃんを触れずにはいられない。
プンプンの人生を狂わせた元凶であるとともに、希望で有り続けた存在。
読みすすめている途中で、僕は完全にプンプン化したので、愛子ちゃんが出てくると「おっ、愛子ちゃんだ!」と俄然テンションが上がっていました。愛子ちゃんが全く変わっていなかったと知った時は、悲しくもあり嬉しくも感じてしまいます。
読み終えた時は、なんともいえない喪失感でいっぱいになりました。
そして、ドッと疲れていました。
バッドエンドでもあるし、一定の救いを得たようにも感じる。
ただプンプンも愛子ちゃんも、 全てが思い通りに行かなかった。
いやぁ、色々と沁みました。
人生は誰かと関わるほどに、世界が広がって、思い通りにいかなくなるね。
ままならねーな、人生は!