盛岡行きの東北新幹線の中で繰り広げられる、伊坂幸太郎の殺し屋小説。
前作のグラスホッパーもだけど、一癖も二癖ある登場人物ばかり。
いつもの伊坂作品ほど伏線運びのキレは無かったけど、
キャラクターが濃くて、ストーリーを楽しめました。
そんな中で、注目のキャラクターは2人。
まずは、作中最大悪である王子。
中学生にして人心掌握術に長け、人生を潰すことに喜びを感じるサイコパス。
弱そうであることを強み変え、言葉選び1つで立場をコントロールする。
1つ印象的だったのは、断定的な言葉選びをする事で、
「こいつは自分なりの価値観を持っている」と周りに思わせる手法。
意味はなくても「こいつ色々考えてるな」とさえ思わせられれば、周りは自分の様子を伺うようになる。
些細なマウンティングを繰り返すことで、気づけば、立場が決められている。
そして、一番押したい登場人物は、30年前に引退した伝説の殺し屋コンビ、木村夫妻。
同じく殺し屋の息子(と孫)のために終盤で立ち上がり、ずっと圧倒的だった王子をあっという間に追い詰めます。
親がチートってのは、よくある話なんだけど、ベタな話ってのは安定して盛り上がりますね。
誰も太刀打ち出来なかった悪を、経験と実力でねじ伏せる。
作中でも言われるんだけど「昔から存在しているものはそれだけで優秀だ」って。
老害って言葉もあるけど、
一方で親の世代は追い越すことのできないチートであるのもまた摂理。
東北新幹線、また乗りたいな〜。